インフルエンザワクチン

注射と鼻スプレー、
どちらが効く?

インフルエンザワクチンには、従来の「注射タイプ」と、鼻にスプレーする「フルミスト」があります。

投与方法の違いで、得られる効果は同じと思われている方も多いのですが、実は免疫をつける仕組みが全く違うのです。

さらに、2種類のワクチンを両方接種するとどうなるのでしょうか?

当院では、医学的な根拠をもとに、それぞれの特徴や予防効果をわかりやすくご説明します。

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注射タイプ 2,970円/フルミスト 7,480円

SECTION 01|2種類のワクチンの違い

同じインフルエンザワクチンでも、免疫のつき方が違う

インフルエンザウイルスは、主に鼻や喉の粘膜から感染します。

私たちの体には、ウイルスから身を守るために、さまざまな免疫の仕組みが備わっています。

その代表的なものが、IgG抗体とIgA抗体です。

① 注射タイプ|血中で、IgG抗体を増やす

従来の注射タイプは、感染力をなくしたウイルスの成分を体内に入れることで免疫をつけます。

主に血液中のIgG抗体を増やし、インフルエンザの発症を予防します。

「鼻や喉の粘膜から感染するのに、血液中の抗体を増やしても感染を防げないのでは?」

そう思う方もいるかもしれません。

しかし、血液中のIgG抗体は、鼻や喉などの粘膜にもわずかには届きます。

そのため、注射タイプでもインフルエンザの発症を予防する効果がある程度期待できます。

② 鼻スプレータイプ|鼻や喉の粘膜で、IgA抗体を増やす

フルミストは、病原性を弱めたインフルエンザウイルスを鼻にスプレーするワクチンです。

弱毒化したウイルスが鼻の粘膜で限定的に増殖することで、自然感染に近い形で免疫をつけます。

最大の特徴は、インフルエンザウイルスが侵入する鼻や喉の粘膜で、IgA抗体などの免疫反応を誘導できることです。

さらに、ウイルスに感染した細胞を排除するT細胞などの免疫反応も刺激します。

ウイルスの侵入口で働く免疫を誘導するという、合理的な仕組みを持ったワクチンなのです。

SECTION 02|IgGとIgAの違い

ウイルスから体を守る、2つの抗体

IgG抗体IgA抗体
主に働く場所血液・体の組織鼻・喉などの粘膜
主な役割肺炎等の重症化を防ぐ粘膜表面での感染を防ぐ
注射タイプ誘導される誘導はわずか
フルミスト誘導される粘膜で誘導される

IgGは、体の中でウイルスから身を守る働きをします。

一方、IgAは、鼻や喉といったウイルスの侵入口で働きます。

また、抗体による「液性免疫」だけでなく、免疫細胞が他の免疫細胞に指令を出したり、感染細胞を排除したりする「細胞性免疫」も重要です。フルミストは「細胞性免疫」も誘導することが知られています。

この仕組みだけを見ると、粘膜免疫も刺激するフルミストの方が、インフルエンザの感染予防に適しているように思えます。

では、実際の効果はどうなのでしょうか?

SECTION 03|本当に効果が高いのは?

結論:感染予防効果に明らかな差はありません。

国内外の研究報告では、感染予防効果に明確な優劣を認めないとする報告が多いです。日本小児科学会も、注射タイプとフルミストについて、インフルエンザの発症予防効果に明確な優劣は確認されていないとしています。Japanese Journal of Pediatrics

しかし、過去の研究を振り返ると、興味深い変化がありました。

〜2009

2009年以前|フルミストの方が効果的だった

2009年に新型インフルエンザが世界的に流行する以前は、小児を対象とした複数の研究で、フルミストの方が注射タイプより高い予防効果を示していました。

2004〜2005年シーズンの小児を対象とした大規模研究では、フルミストを接種したグループのインフルエンザ発症が、注射タイプと比較して約55%少ないという結果が報告されています。

こうした研究を背景に、米国では一時期、健康な2〜8歳の小児にフルミストが優先的に推奨されていました。CDC

2013–2016

2013〜2016年|今度は注射タイプが優勢に

ところが、2009年の新型インフルエンザ流行後、状況が変わりました。

特に2013〜2016年頃の米国では、フルミストのH1N1型に対する予防効果が十分に得られず、注射タイプの方が優れた結果を示しました。

そのため、米国では2016〜2017年、2017〜2018年の2シーズンにわたり、フルミストの使用が推奨されなくなりました。

原因として、当時のワクチンに含まれていた弱毒ウイルスが、鼻の粘膜で十分に増殖できず、期待される免疫反応を誘導できなかった可能性が指摘されています。ここが生ワクチンの難しいところで、使用する弱毒ウイルスが弱すぎても十分な免疫が得られないことがあります。

NOW

現在|どちらも有効な選択肢に

その後、フルミストに使用するウイルス株が改良され、2018〜2019年シーズンから再び使用が推奨されるようになりました。

現在では、注射タイプとフルミストのいずれも、インフルエンザの予防に有効なワクチンと位置づけられています。

重要なのは、免疫の仕組みが優れているように見えても、実際の予防効果が必ずしも高くなるとは限らないということです。CDC

SECTION 04|あなたにはどちらがおすすめ?

予防効果だけでなく、接種方法や体質で選びましょう。

比較項目注射タイプフルミスト
接種方法腕などへの注射左右の鼻にスプレー
痛み注射時の痛みあり注射の痛みなし
ワクチンの種類不活化ワクチン弱毒生ワクチン
主な免疫反応血液中のIgG抗体など粘膜IgA抗体・T細胞など
国内対象年齢生後6か月以上※2歳以上19歳未満
※FDAでは2歳以上49歳以下
小児の接種回数年齢により1〜2回通常1回
注意が必要な方成分に対する重いアレルギーなど喘息、免疫不全、妊娠中など
発症予防効果有効性あり有効性あり

※注射タイプは製剤によって対象年齢や接種量が異なります。

注射タイプがおすすめの方

従来の接種方法を希望する方や、喘息などフルミストの使用に注意が必要な病気のある方には、注射タイプが適しています。

フルミストがおすすめの方

注射が苦手なお子さんや、注射の痛みを避けたい方には、フルミストが選択肢になります。

またできるだけ自然に近い形で免疫を付けたいというお考えを持った方にも適しています。

ただし、接種には適応条件があり、すべての方が受けられるわけではありません。

料金・接種案内

SECTION 05|2つとも接種したら?

注射と鼻スプレー、両方接種すればもっと効果が高くなる?

ここまで読んで、こんな疑問を持った方もいるのではないでしょうか。

「注射はIgG抗体、フルミストはIgA抗体も増やすなら、両方接種した方がいいのでは?」

これは、免疫学的に興味深い考え方です。

注射タイプでは、主に血液中の抗体が誘導されます。

一方、フルミストでは、粘膜のIgA抗体に加え、T細胞による免疫反応も誘導されます。

異なる方法で免疫を刺激することで、より幅広い免疫反応が得られる可能性は理論上考えられます。

併用接種は予防効果を倍増させる??

現時点では、予防効果を増強させるともさせないとも結論づけることはできません。

注射とフルミストの併用によって、どちらか一方だけを接種する場合よりもインフルエンザの発症予防効果が高まるという、十分な臨床データはありません。

SECTION 06|当院の接種方針

一人ひとりに合った予防接種を。

当院では、医学的な根拠をもとに、それぞれのワクチンの特徴を説明し、ご本人の希望や健康状態に合わせた接種方法をご提案しています。

注射タイプ・フルミストの選択が可能

年齢や健康状態などの条件を満たす方は、注射タイプとフルミストから接種方法を選択できます。

19〜49歳のフルミスト接種について

日本で承認されているフルミストの対象年齢は、2歳以上19歳未満です。

一方、米国では、FDAが2〜49歳への使用を承認しています。

19〜49歳で注射・針恐怖症の方には、日本国内では、適応外使用であることを十分理解して頂いた上で、フルミストの接種を行っています。

19歳以上へのフルミスト接種(国内承認範囲外)に関する情報

承認状況
フルミストは国内で承認されたワクチンですが、承認されている対象年齢は2歳以上19歳未満です。19歳以上への接種は国内の承認範囲外(適応外使用)となります。
入手経路
19歳未満に使用するフルミストと同様に、国内の大手医薬品卸業者を通じて入手しています。
国内承認品の有無
19歳以上を対象として国内で承認されている経鼻インフルエンザワクチンはありません。19歳以上の方には、国内で承認されている注射タイプのインフルエンザワクチンがあります。
諸外国における安全性等の情報
米国では、FDAが2〜49歳への使用を承認しています。成人での主な副反応として、鼻水・鼻づまり、喉の痛み、頭痛などが報告されています。
主なリスク
鼻水・鼻づまり、咳、喉の痛み、頭痛、発熱などの副反応が起こることがあり、まれにアナフィラキシーなどの重い副反応が起こる可能性があります。妊娠中の方や免疫機能が低下している方は接種できません。また、国内承認範囲外の使用のため、万一重い健康被害が生じた場合でも、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる可能性があります。
予防接種の予約はこちら

SECTION 07|こんな方はご相談ください

大切な予定の前に、インフルエンザへの備えを。

  • 受験や資格試験を控えている方。
  • 仕事で長期間休むことが難しい方。
  • 旅行や大切なイベントを予定している方。
  • 家族への感染が心配な方。

インフルエンザにかかる可能性を、少しでも減らしたいと考えるのは自然なことです。

ワクチン接種は、インフルエンザの発症リスクを減らすための有効な手段です。

ただし、どのワクチンを接種しても、インフルエンザへの感染や発症を完全に防げるわけではありません。

また、2種類を併用することで予防効果がさらに高まるかどうかは、現在も明らかになっていません。

当院では、科学的にわかっていることと、まだわかっていないことの両方を説明し、納得して接種方法を選んでいただくことを大切にしています。

SECTION 08|よくある質問

Q. フルミストの方が感染しにくいのですか?

必ずしもそうとはいえません。

フルミストには鼻や喉の粘膜免疫を刺激する特徴がありますが、実際の研究では、注射タイプと比べて一貫して高い発症予防効果が確認されているわけではありません。

Q. フルミストは注射と違って痛くないのですか?

注射針を使用しないため、注射による痛みはありません。

ただし、鼻にスプレーした際の違和感や、接種後の鼻水・鼻づまりなどが起こることがあります。

Q. フルミストを接種するとインフルエンザになりますか?

フルミストには、病原性を弱めたウイルスが含まれています。

健康な接種対象者では、通常のインフルエンザのような強い症状を起こすことは一般的ではありません。

ただし、発熱や鼻水などの症状が生じることがあり、免疫機能が低下している方などには接種できません。

Q. 注射とフルミストを両方接種すると、予防効果は上がりますか?

理論上は異なる免疫反応を誘導でき、感染予防効果を高める可能性はありますが、十分な臨床データが存在しないため、感染予防効果が高まるとも高まらないとも言い切れないのが現状です。

Q. 注射とフルミストを同じ日に接種できますか?

フルミストの添付文書では、医師が必要と認めた場合、他のワクチンとの同時接種が可能とされています。

ただし、注射タイプとフルミストを同日に併用することの追加的な有効性・安全性に関するデータは限られています。

Q. 喘息があってもフルミストを接種できますか?

喘息のある方は注意が必要です。

日本小児科学会は、喘息患者には原則として注射タイプを推奨していますので、当院でも原則注射タイプを推奨しています。

Q. フルミストの副反応はありますか?

主な副反応は、鼻水・鼻づまり、咳、喉の痛み、頭痛、発熱などです。

国内臨床試験では、鼻水・鼻づまりが59.2%に認められました。

まれにアナフィラキシーなどの重い副反応が起こる可能性もあります。

妊娠中の方や明らかな免疫不全のある方は接種できず、ゼラチンアレルギーや特定の薬剤を使用している方も注意が必要です。独立行政法人 医薬品医療機器総合機構

SECTION 09|料金・接種案内

インフルエンザ予防接種料金

接種方法料金(税込)
注射タイプ2,970円
フルミスト7,480円

※いずれも自由診療です。自治体の助成が利用できる場合があります。

※ワクチンの在庫状況によっては、希望する接種方法をご案内できない場合があります。

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